人生最悪の夏休み

これは、平凡な学生だった僕が、
E判定から京大に合格するまでの経緯を
ストーリー調に振り返ったものです。

 

第7話「人生最悪の夏休み」

 

それは、人生最悪の夏休みだった。

 

毎週、月曜日になれば、
金曜日までの日数を指折りして数えるくらいの、

それほど休みが好きな僕にとって、
夏休みは一年で最高のイベントだった。

 

しかし、たった”2つ”のイベントのために、
ぼくは貴重な夏休みを
毎日暗い気分で過ごす羽目になってしまった。

 

 

そのイベントのうちの一つ目が、
夏休みの前半のオープンキャンパスだった。

 

休みの日は、いつも夜遅くまで起きて、
朝遅くまで寝ているタイプの自分だけど、

オープンキャンパスの当日は、
なんとか早起きして家を出た。

 

途中で友人のAと合流し、
はじめての京阪電車に乗り換えた。

走行中の車内の見回りで、
車掌さんが丁寧にお辞儀をしてくれた。

大阪人と京都人の品の違いを
なんとなく見せつけられた気がした。

 

しばらくして終点であり、
京大の最寄り駅である出町柳駅に着いた。

 

出町柳からは、京大まで徒歩で移動した。

8月の京都は、とても蒸し暑かった。

あまりの暑さに、制服を脱いで
Tシャツ一枚になりたくらいだった。

 

そして、駅から15分ほど歩いて、
ようやくたどり着いた。

 

 

初めて見る京都大学は、めちゃくちゃ広かった。

 

一つの学部の建物だけでも、
自分の学校がすっぽり収まりそうだ。

それに、よく見てみると、
構内を自転車で移動する人が多かった。

その光景は少し新鮮だけど、
これだけ広いと歩くのが面倒なのは理解できた。

 

外国人の留学生もいた。

しかも、僕らより少し年上くらいの人たちが
彼らと英語で会話していて驚いた。

それと同時に、「さすが京大…」なんて思った。

 

他にも、不思議な看板があった。

時計台とクスノキが見える正門の横に、
「打倒!松本体制!!」という、
大きな文字の看板が立てかけられているのだ。

 

それが気になって、
あとで調べてみたら驚いた。

なんと松本さんというのは、
京大の総長(高校での校長先生)らしい。

(現在は、また別の人が総長に就任している)

 

もし仮に、自分の高校で、
「打倒!○○(校長先生の名前)」
なんて看板を正門に立てたとしたら…。

そんなことをしたら、間違いなく、
その日のうちに看板は撤去されるだろう。

 

それだけじゃなく、看板を作ったやつは、
呼び出されて説教されるに違いない。

 

でも、京大では撤去もされず放置されたまま…。

 

 

そんな不思議な光景を見ていると、
自分がまるで異世界に来たような気持ちになった。

 

 

とりあえず京大に到着してからは、
目的である学科説明会に向かうことにした。

 

Aとは同じ工学部志望だけれど、
希望する学科が違うので、
あとで集合する約束をしてから一旦解散した。

僕の第一志望は、物理工学科だ。

 

いざ会場に行ってみると、
そこはまさに大学の教室という雰囲気だった。

黒板が見えやすいように、
教壇から遠く後ろに行くほど、
階段状に座席の位置が高くなっていく。

普段の高校の教室よりも遥かに大きく、
150人くらいは入るんじゃないかと思った。

 

それと、見学に来ている学生は、
メガネ率がやたらと高かった気がする。

とにかく、周りの人が頭良さそうに見えた。

 

「さすが、京大に来るだけあって、
みんなレベル高そうだな・・・」

そんなことを考えていると、
学科の教授がやってきて説明会が始まった。

 

 

最初に、全体の流れの話になった。

 

その途中で、講義のレベルを調整するためか、

「みなさん何年生ですか?」
「1年生から順番に手を挙げてください」

と質問された。

 

そして、1年生から順番に手を上げていくと、
意外な事実が判明した。

その場にいた人の9割以上が、1,2年生だったのだ。

3年生は自分を含めて、10人もいなかったと思う。

まだ、そこまではよかった。

 

ただ、それを見た教授の次の一言に衝撃を受けた。

 

「そっか、3年生は今の時期、
家で勉強してるのが普通だよね~」

 

…きっと、その人にとっては何気ない一言だったんだろう。

 

それに、いま考えれば、
全く気に留める必要のないことだった。

 

 

でも、何も知らない自分はかなり動揺した。

 

「家で勉強してるのが普通なら、
もしかして自分って相当ヤバイんじゃ…」

 

なんだか急に、自分が場違いなところに
来てしまった気持ちになった。

 

 

結局、講義内容は、

大学で学ぶ熱力学を噛み砕いて説明しながら、
自分たちの研究内容を紹介する

…というようなものだったと思う。

ただ、さっきの言葉が気になって、
あまり内容が頭に入ってこなかった。

 

その後、質疑応答の時間では、
近くに座っていた2年生らしい人が手を挙げた。

 

…質問のレベルも高かった。

 

「これでホントに2年生かよ」と思った。

 

 

そんなわけで、説明会が終わる頃には、
僕はすっかり意気消沈してしまった。

 

Aと合流してからは、
軽く付近を観光したりしたかもしれない。

でも、ほとんど詳しくは覚えていない。

 

「京大に合格する人は、
ああいうレベルの高い人たちなのかな…」

 

途端に現実を見せられたようで、
京大のレベルの高さに圧倒されてしまった。

 

「やっぱり、自分には合格は厳しいのかも」

 

帰りの電車はお互い無言だった。

 

暑い中を一日中歩きまわったので、
僕もAも疲れてしまったのもあるもしれない。

とにかく、今後について考えさせられる
オープンキャンパスだった。

 

そして、その数日後、
心が折れそうになるもう一つの出来事が起きた。

 

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